• Masayoshi Terabe / 寺部 雅能

(CLASSIQ社連載#2)量子ソフトウェア開発の過去、現在、そして未来

QXプロジェクトの寺部です。前回に引き続きイスラエルのCLASSIQ社による連載2回目です。

前回の記事では、ゲート型量子コンピュータ活用の課題をハードウェア、ソフトウェア、人材の観点で紹介頂きました。今回はいよいよCLASSIQ社の開発技術がどのようにそれらの課題を解決していくのかについてご紹介頂きます。



量子ソフトウェア開発の過去、現在、そして未来Part2 / Nir Minerbi, CEO of Classiq technologies(訳:寺部雅能)


前回の記事では、量子コンピュータの地殻変動クラスのメリットを実現するためには、ハードウェア、ソフトウェア、人材の3つのポイントで改善が必要であると述べました。


例えば、IBMは65量子ビットのハイエンド量子マシンを提供していますが、来年には433量子ビット、2023年には1000量子ビット以上の量子マシンを提供する予定です。量子ビットの数が増えれば、より高度なアルゴリズムを動作させることが可能になるだけでなく、量子マシンのエラー率を劇的に低減するためのエラー修正回路の実現も可能になっていきます。


このようにハードウェアが進歩していく中で、今後決定的なネックとなるのがソフトウェアです。現在の量子ソフトウェア開発は主にゲートレベルで行うため、ユーザーは量子ビットと量子ゲートの相互接続の順序を細かく設計する必要があります。これは、量子ビットの数が数十個以下の場合は許容できるかもしれませんが、数千個以上になると現実的には不可能です。



それでは、次世代の量子ソフトウェアプラットフォームに求められるものは何でしょうか?


抽象度の高い記述言語

電子回路設計者がVHDLを使って所望の回路を設計できるように、量子ソフトウェアエンジニアは実現したいことを高レベルで記述し、その記述を自動的に量子回路に合成したいと考えています。



制約条件の定義

量子ソフトウェアエンジニアは、量子回路に使用する量子ビットの数を最小にしたい、上限を設けたいと考えることがあります。また、量子回路の深さ(アルゴリズムのステップ数)が重要な場合もあります。また、ある一定の精度が求められる場合もあれば、低い精度でもよい場合もあります。量子ソフトウェアエンジニアには、これらの制約を指定し、それを満たす能力が求められます。


リソースの見積もり

大規模な量子コンピューティングプロジェクトに携わるチームは、実用化に必要な量子コンピュータのリソースの見積もりをしたいと考えます。特定のオプション価格決定アルゴリズムを実行するために必要な量子ビットの数は?複雑な分子をシミュレートするのに、現在の量子コンピュータは十分なのか?量子コンピュータのリソースを見積もることは、プロジェクトの見通しを立てるために重要です。


デバッグと分析

量子回路は既に複雑ですが,今後さらに複雑になると考えられます.現在のスーパーコンピュータでも、シミュレーションできるのは約40量子ビットまでです。量子ソフトウェアプラットフォームは、設計者による既存の回路のデバッグ、解析、修正を容易にする必要があります。


コードの再利用

複雑な量子ソフトウェア開発、高層ビルのように、それぞれの階が下の階に支えられています。量子プログラマが毎回ゼロから始めるのではなく、既存のコードを再利用できる環境を整えることで、より高度な作業を短時間で完了することができます。


古典的なコードと量子的なコードのハイブリッド計算

量子コンピュータは素晴らしい性能を発揮してくれるものと期待されていますが、古典的なコンピュータの方が優れていることもたくさんあります。理想的なアプローチは、古典的なプロセッサと量子的なプロセッサを共存させることであり、したがって、このようなハイブリッドなアルゴリズムを作成できる開発環境が望まれます。



幸いなことに、こうした要求を満たすソフトウェアプラットフォームが既に存在ます。



Classiq Technologies社の新しいプラットフォーム(www.classiq.io)は、エンジニアが求める動作と必要な制約を定義できる高レベル言語を提供し、要件と制約の両方を満たす回路を合成します。



Classiqプラットフォームを使用することで、これまで設計が不可能であった、あるいは極めて非現実的であった回路を用いて、現実の問題を解決できるようになったとお客様から報告を受けています。



このアプローチの主な利点は、量子チームにドメイン固有の専門家を統合する必要があるという「人の問題」にも役立つことです。ハイレベルなモデリング言語を提供することで、専門家はゲートレベルのコーディングに煩わされることなく、目の前の問題に集中することができます。


量子コンピュータの未来は非常に明るく、最近のハードウェアとソフトウェアの進歩により、現実の問題を解決するための大きな価値を提供することに近づいています。




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